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作家・安部譲二の華麗な自動車遍歴コラム。名車と聞けば馳せ参じる安部譲二、波乱万丈のクルマ人生! 【コラム】華麗なる自動車泥棒 (安部譲二)Vol.2

  • 2017/04/30
  • MotorFan編集部
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(イラスト 鐘尾 隆)

安部譲二の華麗な自動車遍歴コラム!クルマが人生を輝かせていた時代への愛を込め、波乱万丈のクルマ人生を笑い飛ばす!月刊GENROQ‘97年4月から56回にわたり連載された『クルマという名の恋人たち』を、鐘尾隆のイラストとともに再掲載。青年期からギャング稼業時代、そして作家人生の歩みまで、それぞれの時代の想いを込めた名車、珍車(!?)が登場します。稀代のストーリーテラー安部譲二のクルマ語りにご期待下さい!(毎週連載)
(文:安部譲二 イラスト:鐘尾 隆)

第2回 トライアンフ・メイフラワー ’52

僕が初めてクルマを自分のお金で買ったのは、昭和28年のことで、場所はイギリスのロンドン。歳はまだ16でした。

そのころ、僕はひとりでロンドンに住んでいて、昼間は朝日新聞の支局でアルバイトをし、夜はトロカデロというナイトクラブでバーマンの見習をしていたのです。

なんでそんなことをしていたのだと訊かれると、それだけでタップリ単行本1冊分の話をしなければなりません。そんなことを詳しく説明していると、肝心のトライアンフ・メイフラワーの話ができなくなってしまうので、ここは、安部譲二は16歳の時にロンドンに住んでいて、年齢を胡麻化していろいろやっていたのだと思ってください。

今から43年も前のそのころは、アメリカ・ドルが1ドル360円で、イギリス・ポンドが1ポンド1008円でした。

ということは、まだ日本は戦争に負けた痛手が回復していない、貧乏国だったのです。

僕は貧乏が大嫌いな少年だったので、朝から晩までなんでもやって、よく働きました。大柄でませた少年だったので、どこへ行っても21歳といっても疑う者はいなかったのです。ドッグレース場に行っても、バーや男が女を買う店に行っても、歳を訊かれたことなんて一度だってありませんでした。

その当時のモノクロの写真が1枚だけ残っていますが、これが16歳かと、我ながら呆れてしまうほど、不敵な面構えをしています。

朝から晩まで忙しく働いていると、遊ぶ暇がないので自然とお金が貯まるので、僕はクルマを買おうと思い立ちました。200ポンドも出せば、年式は古くても、かなりなクルマが買えたのです。

それに、イギリス人に限らず、ヨーロッパの人は、とても物持ちがいい連中なので、中古車市場には戦前のクルマが珍しくありませんでした。
 
ブリストルとかACなんていうスポーツカーは、戦争前のクルマだとアンティックの値段になってしまうのですが、オースチンやモーリス、それにスタンダードとかボクスホールという大衆車だと、よく手入れしてある状態のいいクルマが200ポンドも出せば手に入ったのです。

クルマを買うと決めた僕は、自動車雑誌や新聞の広告欄に、丹念に目を通しました、いいクルマを安くというよりも、むしろ個性の豊かな変わったクルマを、僕は探していたのです。

こんな性格は子供のころから今まで、ずっと少しも変わりません。何も主張のないクルマには、タダならともかく、自分のお金を払って乗りたくはないのです。

話はちょっと本題からはずれますが、日本のクルマは故障しないで、走るだけはとてもよく走るのですが、一番、僕にとっては肝心な個性というか、主張するものがあるクルマが少なくて詰まりません。

仕事に使うのであればともかく、自分がプライベートで乗るクルマには、個性がなければいけないと、僕は43年も前からずっと思い続けていました。

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