635ps&4WDに秘められた、新たなるパワートレインの理想。 【連載】新型コンチネンタルGT 完全解説④パワートレイン編 《動画あり》
- 2017/12/22
- MotorFan編集部

新型コンチネンタルGTに搭載されるW型12気筒ツインターボ。そのパワー&トルクは実に635ps&900Nmにも及ぶ。そして高次元の走行性からGTとしての快適性まで網羅するにも最新の4WDシステムによる”知性”が必要。その進化も著しい、コンチネンタルGTに展開されたパワートレインの実情に迫る。
TEXT◎大谷達也(Tatsuya OTANI)
新型コンチネンタルGTの心臓部は、もはやこのモデルとは切っても切れない関係にある6.0ℓ W12エンジン。しかし、新型への搭載に際し、広範な部分に改良の手が加えられた。
まず、燃料インジェクターはシリンダー内とポート部の計2基を気筒ごとに装備。筒内直接噴射に用いるシリンダー内のインジェクターは200barの高圧で、間接噴射に用いるシリンダー内のインジェクターは6barの低圧で噴射する。筒内直接噴射は燃料の霧化がシリンダー内の吸気冷却に役立つため、ノック限界が向上して高出力化と高効率化に役立つ。一方の間接噴射は低回転域でも均一な霧化を実現しやすく、低負荷時の安定した燃焼を助ける。つまり、高回転時・高負荷時は直接噴射が、そして低回転時・低負荷時は間接噴射が中心となって活躍し、どんな状態でも理想的な燃焼を実現。高出力化と省燃費化の両立が可能となったのだ。
高出力化と省燃費化の両立に役立つもうひとつの技術が可変シリンダーシステムである。出力トルクが300Nm以下、ギアが3速から8速の間に入っていてエンジン回転数が3000rpm以下の場合、エンジンコントロールユニットは12気筒のうちの6気筒に作動停止を命令。すると吸排気バルブの開閉や燃料噴射、点火などの動作がすべて休止し、W12エンジンの片側バンクのみ動作を続ける。いわばV6 3.0ℓエンジンとしてパワーを生み出すことになるのだ。これによって燃焼効率を改善し、燃費改善を図るのが可変シリンダーシステムの主な役割である。
なぜ、エンジンの半分が休止すると燃費が改善されるのか? エンジンの効率を改善するには、エンジンの動作に伴って起きる損失を減らすのがもっとも近道だとされる。そうした損失のひとつにポンピングロスがある。これは、スロットルバルブが全閉に近づく低負荷時には吸気抵抗が高まり、外気を取り込むだけでエネルギーを消費するために起きる現象。われわれ人間が細いストローを使って勢いよく飲み物を飲もうとするときに苦労するのと基本的には同じ原理だ。したがって、これを解消するにはスロットルバルブをなるべく大きく開いたほうがいい。そこで考えられたのが可変シリンダーシステムで、エンジンを実質的に半分の大きさとすることで本来の状態よりもスロットルバルブを大きく開き、これによってポンピングロスを減少させて燃費を改善しようとしているのだ。
さらに、過給器にはツインスクロールターボを採用。片バンク内の前方3気筒と後方3気筒の排気マニフォールドを別々にまとめたうえでタービンに導くことにより、有害な排気干渉の影響が減少。この結果、ターボチャージャーの反応が格段に速まり、エンジン・レスポンスの劇的な改善を実現した。ちなみに、6.0ℓ W12エンジンの最高出力は635ps/6000rpm、最大トルクは900Nm/1350〜4500rpmで、従来型に比べて最高出力は7.5%、最大トルクは25%も引き上げられている。
最新W12エンジンと組み合わされるのは、ベントレーにとって初となる8速デュアルクラッチ式ギアボックス。素早いシフトでスポーティなドライビングとの相性がいい形式だが、どちらかといえばスムーズなギアチェンジは苦手とされてきた。しかし、ベントレーはコントロールソフトウェアなどを見直すことでスムーズな動作を実現。とりわけコンフォート・モードではギアチェンジを意図的に遅く行なうことで、ドライバーさえ気づかないほど滑らかにシフトを行なうという。
900Nmもの大トルクを2本のタイヤだけで確実に路面に伝えるのは、どれほど高性能なタイヤであっても困難。ただし、ご存じのとおり歴代コンチネンタルGTはフルタイム4WDシステムを介して4輪から優れたトラクションを引き出してきた。この伝統は新型にも引き継がれるものの、初代、2代目と大きく異なるのが、前後輪のトルク配分に電子制御多板クラッチ方式を用いる点にある(従来はセルフロッキングタイプの機械式デフを使用)。この結果、ドライビングモードや路面コンディションなどによって、システム側がアクティブにトルク配分を変化させられるようになった。
では、具体的なトルク配分はどうなっているのか? 前述のとおり、路面コンディションなどによってアクティブに制御されるため「フロント:Xパーセント、リア:Yパーセント」と従来のように単純な数値では表せないものの、ドライビングモードを“コンフォート”もしくは“ベントレー”とした場合、フロントに配分されるトルクは最大で38%で、“スポーツ”ではこれが17%になる。2代目は40:60が基本だったので、安定志向の“コンフォート”もしくは“ベントレー”でさえ従来型よりも「リア重視」のトルク配分となるので、ハンドリングは後輪駆動に近く、“スポーツ”ではこれがさらに後輪駆動に近づくことがわかる。したがって、より俊敏でダイナミックなハンドリングに一新された、と想像できる。
もっとも単純に後輪駆動に近づけただけであればスタビリティが低下し、安定性の高さが売り物であるフルタイム4WDの持ち味は失われてしまう。そこでベントレーは、オーバーステア、すなわち後輪のグリップが失われて不安定な状態に陥りそうになったときのみ、例外的にフロントへのトルク配分を増大させてスタビリティを取り戻す制御を採り入れた。おそらく、こうした状況ではスタビリティ・コントロールも介入し、全力でスピンモードを回避しようとするに違いない。

こうして新型コンチネンタルGTのパワートレインを俯瞰して見ると、ひとつの傾向が浮かび上がってくる。それは、エンジンはよりパワフルに、ギアボックスはより素早く、フルタイム4WDシステムはより後輪駆動に近づくことで、これまで以上にスポーティでレスポンスが優れたドライビングを味わえるようになったことである。しかし、そのいっぽうでパワートレインをいずれも高度に電子制御することで、これまで以上の省燃費性、快適性、安全性も実現する。いわば、これまでよりもパワートレインの守備範囲が格段に広がった点が新型コンチネンタルの大きな特色なのである。
【連載】新型コンチネンタルGT 完全解説①エクステリア編 《動画あり》
【連載】新型コンチネンタルGT 完全解説③車載テクノロジー編
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