Interview DS Automobiles Design Director ティエリー・メトローズ Thierry Metroz 「エンジニアリングなしに前衛的デザインは成り立たない」DSオートモビルズ・デザイン部長インタビュー(後編)
- 2018/12/15
- MotorFan編集部
デザイナーとエンジニアの共創活動がアヴァンギャルドを生み出す
—テクノロジー面でも、フランス車には独自のメカニズムが採用されるケースが多いですよね。独自性にこだわるというのは、フランス全体の文化なのでしょうか?
メトローズ:「自分たちだけのものを作り上げることに熱心になる」という気質は、フランス全体にあるような気がしますね。DSのデザイン部門でもサプライヤーからさまざまな提案を受けますが、それをそのまま受け入れることはありません。「新しい提案を、自分たちはどのように使うか?」を考えることに労力をつぎ込みます。他と同じことはしたくありません。自分たちだけの表現をすることに喜びを感じているんです。
またDSに限らずプジョーやシトロエンのデザインチームは、単独ではデザインを進めません。常にエンジニアリング部門をいっしょになってプロジェクトを進めています。デザイナーとエンジニアが同じフロアに集まって仕事をしているんです。
デジタルツールや3Dプリンタを使っているグループがある一方で、そのすぐ横でフランス屈指の革細工職人たちが、革の貼り方を検討したりしている。デジタルとアナログが共存しているんです。こうしてマルチラテラル(多面的)にコミュニケーションしながらデザイン開発プロジェクトを進めるのがPSAの特徴になっています。
—デザイナーとエンジニアの距離が近いことによって、予想外の新しいアイデアが生まれることはありますか?
メトローズ:デザイナーが思いもしなかったアイデアがエンジニアからもたらされたり、その逆もあります。キャッチボールを続けることで、いいものが出来上がるという利点はありますね。組織が小規模だからできることなのかもしれませんが、こんなことができるのは世界的に見てもほかにないのではないでしょうか。
アバンギャルドを表現するというのは、テクノロジーを抜きにしては不可能。エンジニアなしには実現できません。たとえばウェルカムヘッドライトを回転させようというアイデアはデザイナーが思いついたことですが、その際にLEDを使おうとは言っていませんでした。LEDの採用はエンジニア側からの提案だったんです。つまりデザイナーとエンジニアがお互いに刺激しあったことで、これまでなかった新しい演出が生まれたというわけです。
これからもデザインの方向性は不変
—現在話題になっている自動運転の技術などでも、そうした独自性は表現されるでしょうか?
メトローズ:これはまったく個人的な意見なのですが、最近のモーターショーなどを見ていて危惧していることがあります。それは電動化、自動化が大きなテーマになって、どれもなんとなく無機質な電化製品のようになってきていると感じるということです。どのクルマも人間味や温かみがなくなってきている。このことにデザイナーとして危機感を覚えるし、なんだか残念な気持ちなんですよ。
—そんな中、電動スポーツのコンセプトとしてX E-TENSEを公開しました。
メトローズ:これはフォーミュラEのチームと共同で開発したもので、実際に走り、フォーミュラEマシンと同等のパフォーマンスを発揮することができるんです。つまり先進テクノロジーが備わっている。そしてフランスのサヴォアフェールの表現として羽毛をあしらい、これまで見たことのないカーデザインを作り出しました。このコンセプトカーには、DSというブランドが凝縮されていると言っていいでしょう。
ボディが左右非対称ですから製作は大変で、2台作るぐらいの手間がかかっています。クレイモデルでボディの片側を仕上げて計測し、反対側はそのデータを反転させればいいというわけにはいきませんからね。でも無味乾燥なコンセプトカーが増えてきている中で、これは良くも悪くも「味わい」のあるものにできたと思っています。
—たしかに、とびきりラディカルなデザインです。つまりDSはこれからもアヴァンギャルドで、同時にフランスの伝統的かつ個性的なラグジュアリー表現も盛り込み続ける、ということですね。

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