その顔が変更になった訳 トヨタ・プリウスの価値をサイレントマジョリティに向けて【新型TOYOTA PRIUS】
- 2018/12/02
- CAR STYLING編集部 松永 大演
今回のLAモーターショーで、フルモデルチェンジでもないのに大きな話題となったのがプリウスのマイナーチェンジ。燃費性能を高め、北米仕様にも4WDモデルを追加したことは、大きなトピックスなのだが、それ以上にこの"顔”が話題となったのだ。

マイナーチェンジなのに結構なニュースとなっているのが、プリウスの顔問題だ。今回のマイナーチェンジを手がけたチーフエンジニアの金子將一氏に、そのあたりの経緯を伺うことができた。
新型プリウスは一言で洗練されたともいいにくいが、トヨタファミリーとして昔からいたような一種安心できる存在感を持ち合わせたともいえる。
確かに、現行プリウス発表当時は「あっ」と思ったものの、これまでにないスポーティなイメージもあり、先進的でプリウスらしいという印象も持たれた。他に負けてはならない絶対的な燃費の良さもあり、プリウスの価値を知り尽くし、プリウスでなければならない人たちにとっては、最善のデザインでもあったという。それは今でも変わらないのだ。
ところが、”あのデザインがどうも…” という人も少なくなかったという。コンサバ傾向の人たちにとっては、抵抗のあるデザインでもあった。
その問題は、むしろ北米の方が大きかった。北米はコンサバ傾向が強いこともあって、抵抗感がある人も多めなのだという。
ある時、女性から「これは私の乗る車ではなく、息子が乗る車ね」といわれたことがあったという。その女性はプリウスを代々乗り継いできた人だった。
そこで気がついたのが、本当にユーザーの気持ちに向いていたのだろうか、ということだ。プリウス・フリークにとってはベストなデザインであっても、その周囲の「便利で燃費がいいから好き」といった気楽なパートナーとして使っている人々にとって、最善のデザインであったかという点が検討された。
つまりは単にコンサバティブな人たちに……といったことだけではかたづけられない問題がここにあったようだ。というよりは車で自己主張しなくていい人、あるいは自己主張したくない人たちも多くいるということ。依然、圧巻の燃費性能を持つプリウスが好きな人であっても、だからといってそれを主張したいかどうかはもはや別の話。これでなければならない気持ちと、プリウスに乗っていることを主張したいのは、別のことなのだ。
ある人が、こんな話を聞かせてくれたことがあった。彼は利便性からPCはアップル社のマッキントッシュ(Mac)を使っている。デザインも気に入っているし、インタフェースの出来の良さには驚きもあるという。だからといって、彼はMacを使っていることを主張したくないという。新製品が出たとかいう騒動に巻き込まれずに、そっと買いたい派なのだと。そんな思いは、確かにわからなくもない。
「あんたもプリウスが好きなのかい、じゃ一緒にプリウスの歌を歌おうよ」と言われても、そんな暇も、興味もない人たちだっているということだ。そうした多くのユーザーへの配慮が、このマイナーチェンジには現れていると思う。
具体的には、特に上下方向に伸びるヘッドライトとリヤコンビランプが気になるということ。そのため、フロント、リヤの造形を横方向に広がるイメージに変更したという。
フロントまわりは、深海魚のような鋭い造形が少しおっとりと見えるようになった。リヤは、特に夜間に見るとランプのシルエットが、どんな車とも似ていないのは個性ともいえる。しかし、縦の光の線が全幅を狭くも感じさせていたし、かなり大げさな感じもあった。それを横方向に広がりのある造形に変更。特にリヤビューは、どっしりと安定した感じが演出できたように見える。
ところがそうならば、PHVをベースにしてもいいじゃないかと思うはず。しかし実はPHVには高価なユニットを用いていることもあり、それをすべてのプリウスに展開することはできなかったという。さらにもっと重要なことは、セグメントとして、プリウスPHVはプリウスシリーズのハイエンドに位置するので、標準モデルとの棲み分けは今後もしておきたいところ。
それは差別化ということではなく、高性能、高機能に特化したPHVに対し、標準のプリウスは高性能をよりフレンドリーな存在として成立させたいところ。
そのためもあり、現行モデルをリファインする方向での進化を図ったのだ。フロントで変わっているのは、ヘッドライトとバンパーだけ。ボンネットが少しふくよかに見えるが、それはコンパクトに見えるヘッドライトとのバランスがそう見せている。リヤではリヤコンビランプとバンパー。そしてリヤゲートの一部に灯体を追加した。バンパー部分に下に伸ばしていた時は、法規の問題があって、後方からバンパーに押されてもランプが割れない構造が必要だった。そのために、ランプ部分を後退させ少し外に逃がして配置した。しかし、今回はその必要がないことから、バンパー全体を内側に絞る形となったという。
その結果、これまでよりもコンパクトに見えるようになったところも特徴だ。
……「すごく好き」「悪くないと思う」「良い点が多く、とりわけ燃費が良い点が決め手」「比較検討した結果として、いいと思った」「価格で決めた」……といったように、プリウスオーナーにも「好き」の段階がある。また主張する人の影に、それ以上に実に大きな数の主張しない人たちがいる。
プリウスが一般的になればなるほど、見えてきた大きなハードル。
これは、拡大した莫大なユーザーのなかで“誰からも愛されるプリウス”を目指した新たなステップと言えるのかもしれない。
|
|
自動車業界の最新情報をお届けします!
Follow @MotorFanwebおすすめのバックナンバー
自動車業界 特選求人情報|Motor-FanTechキャリア
「自動車業界を支える”エンジニアリング“ 、”テクノロジー”情報をお届けするモーターファンテックの厳選転職情報特集ページ
自動車向けレザーで高いシェアを持つ日系企業
セールス<国内外担当>
年収
450万円〜750万円
勤務地 愛知県豊田市
この求人を詳しく見る
株式会社デンソーテン
ソフトウェア開発<通信型ドライブレコーダ/車載通信機器>
年収
450万円〜1100万円
勤務地 兵庫県神戸市御所通1丁目2番28号本社へ...
この求人を詳しく見る
「自動車業界を支える”エンジニアリング“ 、”テクノロジー”情報をお届けするモーターファンテックの厳選転職情報特集ページ

自動車向けレザーで高いシェアを持つ日系企業 セールス<国内外担当>
年収 | 450万円〜750万円 |
---|---|
勤務地 | 愛知県豊田市 |
株式会社デンソーテン ソフトウェア開発<通信型ドライブレコーダ/車載通信機器>
年収 | 450万円〜1100万円 |
---|---|
勤務地 | 兵庫県神戸市御所通1丁目2番28号本社へ... |
フランクフルト・モーターショー2019

ついに来た! 新型ランドローバー・ディフェンダー降臨! Gク...
- 2019/09/10
- ニューモデル

〈新型ランドローバー・ディフェンダー〉新着写真続々! Gクラ...
- PR
- 2019/09/12
- ニューモデル

ホンダの100%EVモデル「Honda E」市販車がデビュー! 約348...
- 2019/09/10
- ニューモデル

コンセプト4は4シリーズの未来形!? BMWの超攻撃型デザイン現...
- 2019/09/10
- ニューモデル

フォルクスワーゲンの小型EV「ID.3(アイディ.3)」デビュー...
- 2019/09/10
- ニューモデル

「AI:Trailクワトロ」はアウディの示す近未来EVオフローダー...
- 2019/09/10
- ニューモデル
マツダ3特集

マツダ3セダン「間違いなく、いまもっとも美しいセダン!」 ...
- 2019/09/10
- インプレッション

日本仕様のSKYACTIV-Xは、なぜハイオク仕様で圧縮比15.0なの...
- PR
- 2019/09/09
- トピック
「マツダは裏切らない」実用性を失うことなく美しいデザイン...
- 2019/09/06
- コラム・連載記事
マツダ3 ファストバックXD:600km走ってその完成度は? 燃費...
- 2019/08/26
- インプレッション
マツダ3、人気のカラーは? パワートレーンは? ファストバ...
- 2019/08/29
- ニュース
マツダ3 ファストバックXD:vs VW ゴルフ 走り慣れた都内の...
- 2019/08/28
- インプレッション
ジムニー特集
関東屈指のロングダートを制覇せよ! 秋鹿大影林道&万沢林道...
- 2019/08/17
- コラム・連載記事
スズキ・ジムニーとジムニーシエラでダート走行の燃費を計って...
- 2019/08/09
- インプレッション
スズキ・ジムニーシエラを測って測って測りまくる。高さは? ...
- 2019/08/14
- コラム・連載記事

結局、スズキ・ジムニーのリジッドアクスルは何がスゴイのか?
- 2019/07/01
- ニューモデル
オービス対策‼ 交通取締情報局

移動オービスは何km/hオーバーで光る? 最低検挙速度独断検...
- 2018/11/11
- TOPICS
みんながオービスと見間違えちゃうNシステムの怖さを検証!...
- 2017/10/02
- TOPICS

スピード超過が事故につながる首都高速道路のオービスポイン...
- 2019/09/10
- オービス情報
令和2年、ついに「あおり運転」の罰則も強化へ! どうなる!? ...
- 2019/09/08
- TOPICS