難波教授のデザインウォッチング:2019 ジュネーブショーまとめ 自動車デザインは今「西高東低」か。スバルの前デザイン部長・難波治教授が語る
- 2019/05/15
- MotorFan編集部


そういう視点から見て、今年のジュネーブショーでもっとも強く印象に残ったのは新型プジョー208でした。理由は、やはりプロポーションとスタンスの良さに尽きます。じつは『そこ』ができていないとクルマのデザインは台無しなのです。プジョー208は、そこができています。
クルマを見るときに僕はまず、全体のプロポーションと、そのクルマのスタンスを観察します。簡単にいえば車体の長さや高さ、幅が創り出す立体としての比率のバランスの特徴や、AピラーとCピラーというようなクルマの造形を構成する大事なデザイン構成要素のなす角度、タイヤとボディの量的な比率、またデザインを構成している要素のそれぞれがバランス良く組まれているか、ボディが4つのタイヤでちゃんと支えられているか、というところを見ます。というより、どうしてもそれが最初に目に入ってしまうのですね。人のスタイルと同じです。これをデザイナー間では建築に例えて「アーキテクチャーがしっかりしている」というような言い方をしたりします。
さらにはデザインを構成している線や面の辻褄が合っていることや、実際には目には見えないのですけれど、造形を構成している要素が作り出す体幹がしっかり一本通っているかどうかもとても重要です。その上で表面上のデザインテーマ、新しい表現、サーフェイスがしっかりと作り込まれているか、充分に吟味されているかをほぼ一瞬で感じ取るのです。


そういう意味で今回発表されたプジョー208は秀でていました。充実感のある面質も合わせ、とても車格感のあるクルマに仕上がっています。端正でしたがやや地味だった前型に比較して、新型の「新登場感」やそれを演出しているスポーティなデザインバランス、全体の肉付きなど、良くできているのです。
そして、さらにそれを後押ししているのが内装の充実感です。造形の構成もさることながら、表面を覆う素材、樹脂の仕上げ、メーターや中央のスクリーンのグラフィックデザイン、加飾にかけられている素材の良さ、光るものの表情出し、など内装CMF(Color Material Finishの略。現在の商品はインテリアの色と素材と仕上げが最後の決め手となる)がとてもよく仕上がっています。
しかも必要なところにはお金がかけられていて、このクラスではないような仕上げのクオリティになっているのです。ドアトリムに仕かけられたLEDの細い飾りライトは色が変化するのですが、さすがにこれは少しやり過ぎか? とも思いました。でも、こういう演出もこのクルマを買いに来て試乗をするお客様にはプレゼントにはなるのかもしれません。
プジョー208を買いにくるお客様は、まず外観に惹かれ、その後ドアを開けて中に乗り込んでインテリアの出来栄えを見て納得して購入を決める、というシナリオになると思います。外観に「惹かれ」と書きましたが、カーデザインの命はこれに尽きます。お客様が、そのクルマに惹かれたら、それが一番強力だと思います。
同様な見方で、ルノーの新型クリオも、新型としての鮮度(新登場感)という側面では覇気がやや劣るものの、これらのクルマを購入するユーザー層のいろいろなことを総合的に考慮したなかで、とても良いクルマに仕上がっったと思います。
これらのコンパクトカーは本当に生活に密着した、最もユーザーとの結びつきの強いクラスで、お客様にいかに良い商品を届けられるかが求められています。コンパクトカーに限らず、クルマは一度買うと長く使うもので、時間が経っても色褪せないというか、そのクルマの良さをずっと感じながら使っていただくことができるような商品を提供するのがメーカーの役目であり、デザイナーはそれを果たさねばならないといつも考えています。
また、プジョー208のような場合には、このクラスらしい小気味好い走りを予感させるスタンスや、明快なデザインテーマが必要です。華美にする必要はなく、そのぶん若さとか、溌剌さとか、チャーミングさとかで表情魅力を作り出せれば良いのです。そういう根本的な良さをしっかりと作り込んで魅力づけしておけば、たとえその数年後に新型が出ても陳腐化することなく乗り続けることができる。
こういうクルマ作りのスタンスこそ、良いものを長く使い続けるヨーロッパの思想から生まれてきている良き伝統の力なのではないかと思っていますし、堅実なお客様への商品の届け方なのではないかと思っています。
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