〈試乗記〉DNGA第一弾のダイハツ・タントは、軽自動車の走りを変えた!
- 2019/09/06
- ニューモデル速報

これからのダイハツ新型車の屋台骨となるDNGAの採用第一弾となる新型タント。シャシー、パワートレーンといったハード面はもちろんのこと安全装備やユーティリティも格段にレベルアップ。ダイハツはおろか軽自動車という枠そのものを牽引せんばかりの進化を果たした。
REPORT●岡本幸一郎(OKAMOTO Koichiro)
PHOTO●平野陽(HIRANO Akio)
※本稿は2019年7月発売の「ダイハツ・タントのすべて」に掲載されたものを転載したものです。

パワートレーンから車台まですべてを刷新して登場
今回のモデルチェンジはこれまでとはまったく事情が違う。いくつものプロジェクトを同時進行する自動車メーカーにとって、新型車の開発スケジュールに合わせてすべてを画期的に新しくできるタイミングというのはなかなか訪れないのが常。ところが「DNGA」による第一弾商品となる新型タントは、正真正銘の全面刷新である。これにより、「走る」「曲がる」「止まる」の基本性能を大幅に向上させている。
新型タントをドライブしてまず感じるのが、軽自動車の常識を超えたスムーズで上質な走り味だ。世界初となるスプリットギヤを用いて伝達効率を高めた大幅改良エンジンの恩恵は小さくないことが窺える。
自然吸気、ターボともスッと軽やかに動き始めてスルスルと加速していく点では共通していて、アクセルを踏んだとおりリニアに反応するので飛び出し感も抑えられている。さらにはアクセルオフ時や停止直前に生じがちなギクシャクした動きもセーブされていて、一度減速して再加速する、というような状況でも至ってスムーズで予測と実際の加速感のズレが小さい。
レシオカバレッジを拡大したCVTと低速からトルクを発揮するエンジン特性の改良により、出足から力強く滑らかに加速するのでストレスを感じることもない。エンジンとCVTの連携がとても良く出来ており、回転の上昇と実際の加速感が上手くリンクしている。CVTにありがちなエンジン回転数の先走り感といった諸々の悪癖が気になることもなく、走りにはCVTと思えないほどダイレクト感があるのだ。これには高速域でベルトと併せてギヤで駆動力を伝達するという世界初の機構も効いているに違いない。
マルチスパークや高タンブル機構などを採用して燃焼素性を改善したという新エンジンの恩恵は、ターボの対ノッキング対策においても顕著だ。燃焼の制御が難しくノッキングの生じやすい低回転域を避けてエンジン回転を高めに維持するようにしている例は競合他社のターボ車にも見受けられるところだが、新型タントはそうなっていない。アクセルを踏んだとおりリニアな加速を実現しているので、とても乗りやすい。

競合他社を見渡すと、ターボはパワフルだが低速域の扱いやすさに欠けるため、高速道路をよく使うならまだしも、市街地が主体のユーザーにはリニアな特性の自然吸気の方が勧められるという車種も少なくない。ところがタントの場合は、ターボ車も市街地で扱いやすく、むしろ低いエンジン回転でも十分な加速を得ることができて好都合だ。小さなアクセル開度のままスイスイと走れて余裕を感じさせる。
一方の自然吸気も動力性能が増したおかげで、高い車速域で走ることの多いユーザーでもあまりストレスを感じることがなくなったように感じられた。むろん動力性能の向上は軽量化も効いていることに違いなく、ターボの方がずっとパワフルなのは言うまでもないが、新旧を比べた上がり幅でいうと、実は自然吸気の方が大きいような気もした。
ステアリングスポークに配された「POWER」ボタンを押すと、CVTのセレクターでSレンジを選ぶより、シフトスケジュールだけでなくエンジン特性も変わってアクセルレスポンスが上がり、よりパワー感が高まる。欲をいうとターボ車はこれだけ走れるのだからなおのこと、パドルシフトが欲しくなるところだ。
静粛性にも相当に配慮されていることは明らかだ。車外との遮蔽感があり、音の低減に注力したという新開発のタイヤも効いて、車内はかなり静粛性が高い。さらには車内に侵入するパワートレーン系の遮音や吸音が行き届いていて、アクセルを踏み込んで6000rpm近くまでエンジンを回しても静かな印象が変わらないことにも感心した。上質な走り味の実現にも大いに力を入れたことが窺える。

高い接地感で安心感のある素直なハンドリング
フットワークの良さもなかなか印象的だ。足まわりは、14インチ仕様と15インチ仕様でチューニングも差別化されており、ドライブフィールも異なるのだが、いずれも共通しているのは、クルマの動きが素直で、クルマがどのような状態にあるのかが掴みやすいことだ。四輪がずっと理想的に路面に接地している感覚があるので安心感がある。
サスペンションジオメトリーはフットワーク最優先で決めたとのことで、その良さが出ているようだ。リヤは中間ビームの形式を踏襲しつつ、ブッシュを斜め配置にして横力に対する剛性を上げたり、ビームとスタビライザーなど全体剛性を上げるなどしたおかげでバネレートを落とすことができたという。それも快適性や素直な動きに効いている。
15インチ仕様は偏平タイヤの性能をより引き出せるよう、バネレートをやや高めのスポーティなセッティングとするとともに、コスト高となることを承知でリヤのアブソーバーには乗り心地に優れる低フリクションの上等なものが奢られている。
サイドウォールの薄い15インチ仕様は路面への感度が高いことには違いないが、これにより引き締まっていて踏んばりながらもよく動き、微小な振動を吸収しやすくフラット感もある。大きめの段差を乗り越えたあとの振動の収束性も高い。
むろんタイヤのハイトの違いで路面への当たりは14インチの方がソフトだが、15インチも足まわりが突っ張った感じもなく、しなやかに動きながらもロールが抑えられていて、ややペースを速めたコーナリングでの安定感はだいぶ違う。
こうした重心が高くてトレッドの狭いクルマでも、ここまでできるものかと大いに感心させられた次第。ウエイクを手掛けたダイハツにとってみれば、タントぐらいならワケないことなのかもしれないが。
ステアリングフィールも車速に合わせて操舵力の重さも適度に変わり、しっかり路面を捉える感覚がステアリングを通しても伝わってきて、走っていることをドライバーに実感させる味付けとなっている。
ステアリングを素早く切り込むと、最初にパッとノーズの向きが変わって、そのあとゆるやかについてくるのも絶妙な味付け。決して鈍いと感じさせることはなく、それでいて横転する危険性を避けるために、あえてこうしているようだ。
15インチ仕様はタイヤの剛性も十分にあり、ハンドリングとのマッチングもまずまず仕上がっている。対する14インチ仕様はタイヤのキャパが不足気味で、操縦性には不満もあるが、軽やかな走り味とソフトな乗り心地は、これはこれで日常的にちょこまかとクルマを使うユーザーに好まれることと思う。
また、新型タントは利便性の面でも大きく進化を遂げている。外寸が小さいからこそなおのこと際立って感じられる広々とした室内空間と、前後ドア埋め込式Bピラーとしたことによる唯一無二の使い勝手など、これまでのタントの定評ある部分は受け継ぎなから、インテリアの各部もいろいろ進化を遂げているのだ。
中でも注目は運転席が後方まで超ロングスライドできるようにされたことだ。これにより前後左右席間のアクセス性が飛躍的に向上することは少し試してみただけでもよくわかった。実生活で使うと、よりそのありがたみを実感することに違いない。

- 1/2
- 次へ
|
|

自動車業界の最新情報をお届けします!
Follow @MotorFanwebおすすめのバックナンバー
フランクフルト・モーターショー2019

ついに来た! 新型ランドローバー・ディフェンダー降臨! Gク...
- 2019/09/10
- ニューモデル

〈新型ランドローバー・ディフェンダー〉新着写真続々! Gクラ...
- PR
- 2019/09/12
- ニューモデル

ホンダの100%EVモデル「Honda E」市販車がデビュー! 約348...
- 2019/09/10
- ニューモデル

コンセプト4は4シリーズの未来形!? BMWの超攻撃型デザイン現...
- 2019/09/10
- ニューモデル

フォルクスワーゲンの小型EV「ID.3(アイディ.3)」デビュー...
- 2019/09/10
- ニューモデル

「AI:Trailクワトロ」はアウディの示す近未来EVオフローダー...
- 2019/09/10
- ニューモデル
マツダ3特集

マツダ3セダン「間違いなく、いまもっとも美しいセダン!」 ...
- 2019/09/10
- インプレッション

日本仕様のSKYACTIV-Xは、なぜハイオク仕様で圧縮比15.0なの...
- PR
- 2019/09/09
- トピック
「マツダは裏切らない」実用性を失うことなく美しいデザイン...
- 2019/09/06
- コラム・連載記事
マツダ3 ファストバックXD:600km走ってその完成度は? 燃費...
- 2019/08/26
- インプレッション
マツダ3、人気のカラーは? パワートレーンは? ファストバ...
- 2019/08/29
- ニュース
マツダ3 ファストバックXD:vs VW ゴルフ 走り慣れた都内の...
- 2019/08/28
- インプレッション
ジムニー特集
関東屈指のロングダートを制覇せよ! 秋鹿大影林道&万沢林道...
- 2019/08/17
- コラム・連載記事
スズキ・ジムニーとジムニーシエラでダート走行の燃費を計って...
- 2019/08/09
- インプレッション
スズキ・ジムニーシエラを測って測って測りまくる。高さは? ...
- 2019/08/14
- コラム・連載記事

結局、スズキ・ジムニーのリジッドアクスルは何がスゴイのか?
- 2019/07/01
- ニューモデル
オービス対策‼ 交通取締情報局

移動オービスは何km/hオーバーで光る? 最低検挙速度独断検...
- 2018/11/11
- TOPICS
みんながオービスと見間違えちゃうNシステムの怖さを検証!...
- 2017/10/02
- TOPICS

スピード超過が事故につながる首都高速道路のオービスポイン...
- 2019/09/10
- オービス情報
令和2年、ついに「あおり運転」の罰則も強化へ! どうなる!? ...
- 2019/09/08
- TOPICS
Motor-Fanオリジナル自動車カタログ
自動車カタログTOPへMotor-Fan厳選中古車物件情報

ダイハツ タント
Xリミテッド 軽自動車 社外ナビ 片側電動スライド ETC
中古価格 3.9万円

ダイハツ タント
カスタムXSA/1オーナー/社外ナビ/片側パワースライド
中古価格 98.8万円

ダイハツ タント
RS
中古価格 18万円

ダイハツ タント
カスタムX トップエディションSA 全国対応保証付き LED
中古価格 115万円

ダイハツ タント
Xリミテッド
中古価格 9.5万円

ダイハツ タント
車いす移動車
中古価格 34万円