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MFi131「博士のエンジン手帖」試乗 ホンダ・クラリティ FUEL CELLに乗ってみました

  • 2017/07/26
  • Motor Fan illustrated編集部 萬澤 龍太
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少々ゴチャゴチャしていて恐縮ですが、新幹線と燃料電池車。日本の技術の粋です。

モーターファン・イラストレーテッドの好評連載「博士のエンジン手帖」。
131号のテーマ車両はホンダのクラリティ FUEL CELLです。
トヨタMIRAI以来、久しぶりの燃料電池車が誌面に登場します。

日本で乗れる燃料電池車(FCEV)は2台。他方のトヨタMIRAIは三栄書房の社用車の一台にもなっていることもあり、われわれにとっては身近な存在です。しかしホンダのFCEVは、先代のクラリティFCXも含めて一般販売されているわけではなく、どうしても馴染みがありません。広報車でお借りできるのはありがたい限りです。

そんなこともあり、借り出して走ると少々期待するわけです。「お! クラリティだ!」みたいな反応を。ところが──なぜか周りは無反応。おかしいなあ、珍しいクルマなのに。どうやら、この個体の色が少なからず影響している模様。葡萄茶色のためにオデッセイとかジェイドとかと間違われているようです。うーむ。シトロエンCXの現代版みたいで格好いいと思うんだけど。

燃料の種類「圧縮水素」です。格好いい。`
まあそれでもFCEVという特別なクルマであることは揺るぎません。ご存じ、MIRAIのJC08モードでの航続距離700km/定員4名に対して、750km/5名に仕立てています。MIRAIが車両センターに燃料電池スタックとコンバータを載せ、そのために後席中央部にスペースが少なくなり思い切って定員4名にしたのに対し、クラリティFCは燃料電池スタックをエンジンルーム(という言い方もヘンだけど)に収めることで車両センターのレイアウトをフリーに。5名乗車を実現しています。

乗ってどうか。正直なところ、MIRAIも含めてFCEVの感想ってのはさほどでもありません。誤解を恐れずに言えば、単なるEVですからね。FCEVの意義は水素を用いてモータ駆動のための電気を作っているということであって、加速がすごいとか滑るように走るとかいう感想はFCEVのうちの「EV」の部分だけというわけです。

では「FC」の部分はどうか。わかりやすいところで言えば、空気をFCスタックに送り込むためのコンプレッサの音が耳に入ってきます。クラリティFCのコンプレッサは遠心式の2段式で、かなりの高圧でスタックに空気を送り込んでいます。もちろん、電動式です。

畑村博士、ホームコースで試乗中
エネルギーモニタを眺めながら乗ってみると、走行の有無にかかかわらず、パワーONの状態では絶えずFCスタックに水素が送り込まれているのが見て取れます。エンジンで考えれば、停止していてもエンジンはアイドリングしている、みたいな状態なのでしょうか。一度水素の供給を止めると再始動に時間がかかるからなのかもしれません。

発電した電気は、溜めることなく即座にモータへ印加。「エネルギーフローとしてはシリーズハイブリッドが近いのう」と畑村博士はおっしゃっていて、なるほどと思いました。

発電余剰分や回生ブレーキで得た電気は二次電池へ充電するのですが、ホンダがこの二次電池(リチウムイオン式)の容量をなぜかひた隠しにするのです。GSユアサ製で、単セルの性能は判明しているのですが、これをいくつどんな接続方法で用いているのかがわからない。前席シート下に収めるくらいの大きさであり、それほど大容量でないことはエネルギーモニタを眺めていてもわかります。

回生を続けて満充電になると回生ブレーキが利かなくなります。箱根の下りでこの状態に陥ると、トヨタのようにBモードがあるわけでもなく、当然トランスミッションでローレンジというわけにもいかなく、完全にフットブレーキにのみ頼る格好になるわけで、下り終えたあとはかなりパッドが焦げ臭くロータも熱を帯びていたのが心配でした。

回生ブレーキといえば、この個体は異音が大きいことも印象に強く、しかし別の個体に乗った世良耕太さんによれば「こんな音はしなかった」とのことで、早合点は禁物でした。

イワタニ水素ステーション芝公園。充填量は3.06kgでした。
JC08モードで航続距離750kmとはありますが、実際のところはいかがか。広報車をお借りした時点で360kmの数字がインパネに示されていました。三菱i-MiEVや日産リーフは航続可能距離がドライバーの運転履歴に頼っていて、きっとクラリティFCも直前に借りた人がガンガンに踏んだから360kmなんだろう、チマチマ走れば数字は増えていくよね──と思ったのですがなかなか変わらない。

いっぽう、平均燃費値は踏み方によってめまぐるしく変わります。まるで瞬間燃費値のように。いい数字が出てきたので航続距離も伸び──ていないや、やっぱり。という繰り返し。結局、360kmくらいの距離でやはり水素はなくなっていきました。

お返しする前に充填しなければなりません。FCEVの悩みの種です。水素ステーションのリストを眺めると以前より増えたのはうれしいのですが、よく調べると平日の日中のみとか、週に2日だけオープンとか、なかなか難易度が高い。結局、総本山とも言える芝公園のステーションに向かうことにしました。ここなら平日は夜の10時まで開いているからです。到着すると、充填者2名にきれいなお姉さんが3名と、たいへんな歓待ぶり。MIRAIしかこないところにクラリティFCでしょうから、珍しかったのかもしれません。

さて、畑村博士のご感想は。エネルギー問題に非常に心を痛めているので、今回もいろいろ思うところが多々だったご様子です。次回の「博士のエンジン手帖」をどうぞお楽しみに。

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