可変圧縮比エンジンとは何か──安藤眞の『テクノロジーのすべて』第8弾
- 2019/01/14
-
Motor Fan illustrated編集部

宣伝上手の日産であるにもかかわらず、マツダのスカイアクティブ-Xほど話題になっていないのが、量産車世界初の可変圧縮比エンジン“VCR(Variable Compression Ratio)”。北米向けのSUV・インフィニティQX50と、中国向けの4ドアセダン・アルティマに搭載されているが、日本向けのモデルに搭載されるかどうかについては、日産は沈黙を続けている。今回はこのエンジンの将来性について、考察してみたい。
TEXT:安藤 眞(ANDO Makoto)
構造や作動については、文章で説明するより動画を観てもらったほうがわかりやすいので割愛するが、コンロッドとクランクシャフトにシーソー式のリンクを噛ませることで、圧縮比を連続的に変化させることができるのが特徴。この機構が採用されたKR20DDT型では、圧縮比を8から14の間でシームレスに変えることができる。
可変圧縮比サイクルといえば、有名なのがアトキンソンサイクルだが、それと決定的に異なるのは、VCRは同一サイクル内で圧縮比を変えることができない、ということ。アトキンソンサイクルの狙いは、圧縮行程で圧縮比を落としてノッキングと圧縮損失を回避し、膨張行程では長い膨張比にして燃焼圧を長く使い、熱効率を改善することだが、VCRはそれができない。
ならばなぜ、VCRは圧縮比を可変化するのかといえば、過給を前提としているからだ。過給エンジンは、過給した際のノッキング限界が圧縮比の上限を決めるため、高過給をかけて大きなトルクを取り出すには、圧縮比は下げざるを得ない。しかし低圧縮比化すれば、過給が必要ない低負荷域での熱効率まで下がり、ダウンサイジングのうまみが薄れてしまう。そこで、過給をかけない低負荷域では圧縮比を高めて熱効率を向上させ、高負荷域では燃費は泣いても高過給をかけて大トルクを取りだそう、というのが、VCRエンジンの狙いである。

となると、用途としては、6気筒や8気筒でないと出せないトルクを直4過給で出す、という使いかたになる。
特定領域の熱効率を高めれば良いハイブリッド用エンジンなら、圧縮比は可変にする必要はないし、無過給2.5ℓ(直4の上限がこれくらい)のトルクで足りるクルマに使用する意味もない。となると、用途は意外と限られてきそうだ。
実はVCRと良く似た機構で、同一サイクル内で圧縮比を変えることができるエンジンは、すでにホンダが量産している。家庭用コージェネレーション(熱電併給)システムのガスエンジンに採用されているEXlinkがそれだ。ホンダはこの機構を車載用にするつもりは無いようだが、これをシリーズ式ハイブリッドに使用したら、面白いものができるのではないか。
EXlinkの解説ページはこちら(https://www.honda.co.jp/tech/power/exlink/)
|
|

自動車業界の最新情報をお届けします!
Follow @MotorFanwebおすすめのバックナンバー
学生フォーミュラ2019:全車両カタログ
E27:神奈川工科大学
E21:National Taipei University of Technology
E26:日産京都自動車大学校
E18:National Cheng Kung University
E25:成蹊大学
E3:豊橋技術科学大学
フランクフルト・モーターショー2019

ついに来た! 新型ランドローバー・ディフェンダー降臨! Gクラス...

〈新型ランドローバー・ディフェンダー〉新着写真続々! Gクラスの...
PR

ホンダの100%EVモデル「Honda E」市販車がデビュー! 約348万円...

コンセプト4は4シリーズの未来形!? BMWの超攻撃型デザイン現る【...

フォルクスワーゲンの小型EV「ID.3(アイディ.3)」デビュー! 3...

「AI:Trailクワトロ」はアウディの示す近未来EVオフローダーのカ...
ジムニー特集
関東屈指のロングダートを制覇せよ! 秋鹿大影林道&万沢林道(酷...
スズキ・ジムニーとジムニーシエラでダート走行の燃費を計ってみた...
スズキ・ジムニーシエラを測って測って測りまくる。高さは? トラ...

結局、スズキ・ジムニーのリジッドアクスルは何がスゴイのか?
オービス対策‼ 交通取締情報局

移動オービスは何km/hオーバーで光る? 最低検挙速度独断検証!...
みんながオービスと見間違えちゃうNシステムの怖さを検証!【交...
